●『社会教育学研究』第61巻第1号(2025年6月、日本社会教育学会)
古市 将樹(常葉大学)
「著者である山野晴雄氏が「私の現段階での自由大学運動研究の集大成として、一冊にまとめたもの」と記しているように、本書は、自由大学運動に関する総合的な解説書であり、かつ、これまで多くの研究者によって発表されてきた自由大学研究を鳥瞰的に捉えた研究所となっている。」
「本書では章ごとの関連性もある自由大学研究の地図を提供してくれていると言えるであろう。この地図によって、ある研究が研究全体のどこに位置し、他のどのようなテーマの研究と関係しているかなどを把握することで、今後の自由大学研究のさらなる充実に大いに資すると考えられる。」
●『地方史研究』第74巻第4号(2024年8月、地方史研究協議会)
田中 雅孝(飯田市歴史研究所研究員)
「本書の特色は、第一に、著者が一九七〇年代に各地に存命していた自由大学経験者に聴取した口述史料を始めとして、関係者の書簡、講義ノート等の精力的な史料探索を基盤にした地域史研究の真髄を示すものである。第二に、この史料により、自由大学に対する民衆の学習意識を検証し、「民衆的アカデミズム」(小宮山量平)の創造の可能性に照明を与えたものである。第三に、自由大学に関わった人々の人生経路をたどり、「大正デモクラシー状況」のもとでの民衆教育の可能性を検証するものである。評者は、本書に触発されて、青年たちの自由大学の教育経験が、一九三〇年代以降の総力戦体制の時代、さらには戦後史において、いかなる意味を持ちえたのか、個々の人生経験に内在して探ることは、地域史研究の今後の課題であると考えている。」