
『大正デモクラシーと地域民衆の自己教育運動-自由大学運動の研究-』(自由大学研究・資料室、2023年)が飯田市歴史研究所の飯田歴研賞2024を受賞しました。受賞理由は次の通りです。
「1970年代、学問とは何か、教育とは何か、という切実な問いのなかから自由大学運動はストとした。山野氏はその先駆者であり、先導者でもあったが、本書は氏の永年の研究成果を集大成した著作である。
周知のように自由大学運動においては土田杏村・山本宣治・高倉テルら知識人の文化論・学問論と、学習運動を実際にになった地域青年たちの意識状況を総合的に分析していくことが求められる。そのことを通してはじめて「学問」とは何か、それを「シンプルライフへのセルフチェック」自由」に地域の青年たちが「担う」とはどういうことか、とったアクチュアルな問題が浮かびあがってくるが、本書の叙述はこうした問題を提示するうえで優れたものとなっている。また地域(新潟や伊那、福島など)における自由大学運動の発掘は本書の白眉でもある。
研究史の叙述や年譜など関連資料も充実しており、後進にとってよい研究の手引きともなっている。
以上、(1)充実した内容を含む歴史叙述、(2)今後の研究へのよい入門書であること、そしてなによりも(3)市民自らが学問・研究することとはどういうことか、といった問題を提示していることにおいて飯田歴史研究所の設立理念にも沿う、この3点によつて歴研賞受賞にふさわしい作品と評価した。
授賞式は2024年9月7日に行われましたが、その様子が『信濃毎日新聞』(2024年9月23日)に掲載されました。
